泌尿器科の病気の説明です

泌尿器科って何?

泌尿器科は性病科ではありません。でも、性病も診ます。

泌尿器科という診療科名は、少し前まではあまり耳にする事はなかったですが、タレントの間寛平さんなどの著名人が前立腺癌に罹患し世間を賑わしたり、尿漏れ・頻尿などの症状の薬のCM、健康をテーマにしたテレビ番組などで目にすることも多くなってきたのが現状です。

泌尿器科は、腎臓に始まる尿管・膀胱・尿道といった「尿の産生場所と通り道」男性生殖器(精巣・前立腺・ペニス)を扱う外科であります。

腎臓癌・膀胱癌・精巣癌といった癌の手術、尿路結石の治療、腎不全に対する血液透析、副腎・精巣・副甲状腺といったホルモンに関係した臓器の治療も行います。

もちろん淋病・クラミジア感染症・ヘルペス・尖圭コンジローマなどの性感染症(STD)の治療も行っています。

外来におみえになる患者さんは、

「おしっこに血が混じる」「尿が出にくい」「尿漏れ・おねしょ」「おしっこの回数が多い」「おしっこの時に痛い」「腰が痛い」「むくみ」「たまが痛い・腫れた」「ペニスの悩み」…

色々な悩みを持って来院されます。どんどん元気のなくなる男性陣には頑張っていただかねばなりませんし、元気な女性陣には尿漏れなど気にせずより元気になってもらわなければなりません。

腎臓は非常に大切な役割を担っています。尿に関する症状は、もしかすると重大な病気の徴候かもしれません。些細な事でも気になることはすぐに診察を受けてください。

尿漏れ(過活動膀胱)―女性編―

往年のマドンナの野際陽子さんが、尿漏れのコマーシャルに出演する事は少しショッキングでした。しかし、女性の尿漏れは決して稀な症状ではありません。40歳以上女性の10人に1人は尿の回数が多い、尿漏れなどの症状に悩んでいます。女性の場合、体の構造の特徴、妊娠・出産、更年期による女性ホルモンの低下などに起因し、多くの方が尿に関する悩みを抱えています。図のように、女性の膀胱は骨盤底筋群というハンモックの上に存在しており、立った状態では内臓の重みがかかる為、傷つき、緩みやすくなります。そうすると膀胱などが下がり、尿漏れ、残尿感、膀胱・直腸の脱出といった不快な症状が起こります。また、骨盤底筋群が痛む一番の原因は妊娠・出産で、産後に尿漏れを経験された方は多いのではないでしょうか。その他、神経系のトラブル、膀胱炎、膀胱の石、腫瘍などが尿漏れの原因になる事もあります。症状だけでは判断ができず治療法も体操や薬、手術を含め様々です。最初はお話を聞いて尿を調べるだけですので怖がらずにお気軽にご相談下さいね。

尿失禁(尿が漏れる)―男性編―  

尿漏れの原因は男女とも同じですが、男性は尿道も長く、尿が漏れにくい構造になっています。そのため、尿が漏れる場合は重大な病気が隠れている可能性が高いです。

尿が出にくい場合、前立腺の異常による病気が心配されます。前立腺肥大症・前立腺炎、前立腺癌等です。尿がうまく排出できないと膀胱に多量の尿が残り、常に膀胱が充満した状態で限度を超えた分が少しずつ漏れる、溢流性尿失禁が起こりやすいです。腎臓にも悪影響を及ぼす危険があります。

尿に血が混じる血尿の場合は、膀胱結石・膀胱炎・膀胱癌等が疑われます。膀胱炎ならば抗生物質を飲むだけで良くなりますし、結石の場合も手術で摘出すれば良くなります。手術も内視鏡で出来ますので、お腹を切る必要はありません。膀胱癌の場合は早期発見・早期治療!早く見つければ内視鏡で完全に治せます。

基本的に年のせいで尿が漏れる事はありません。年のせいと諦めず、また症状があるのに働き盛りでお時間の無い男性の皆様、是非とも泌尿器科専門医の診察を受けてください。

結石は夜につくられる?

尿路結石は5000年前のエジプト文明の頃より人類が悩まされてきた病気です。尿に溶け込んだミネラルの濃度が過飽和状態となり結晶化し、それが成長すると結石となります。その為、よく汗をかく暑い夏場に結石患者は増加します。汗や息とともに体内の水分が失われ脱水症状になり、尿が濃縮される為です。特に夜間、就寝時はその傾向が強く、非常に結石のできやすい環境となります。

結石の症状は、『疝痛発作』という腰から脇腹までの激痛、血尿、冷汗、吐き気です。痛みは激烈で救急車で搬送される方も多く、その痛さは出産時の陣痛に匹敵するといわれています。

治療法は、基本的に自力排石を目指しますが結石が1センチ以上、腎臓に悪影響がある場合は、体外衝撃波による破砕(ESWL)、内視鏡での手術となります。

残念ながら結石は再発が多く、「富裕病」の異名もあり、食事の影響が大きく食生活の欧米化に伴い結石患者は増えています。特にビールは結石の原因となるシュウ酸・尿酸を多く含みます。水分は意識して多く飲み、偏食をせず、バランス良く摂取する事が大切です。

これを機に、痛みにのたうち回る結石の予防を兼ねて、健康な身体を手に入れましょう。

前立腺肥大症とは?

■ どんな病気?
前立線肥大症は、泌尿器科のもっともポピュラーな病気です。しかしながら前立線の位置、症状共に、よくわからない方が多いのが現状ではないでしょうか?前立腺は図のように膀胱の真下にあり、その中を尿道が通っています。前立線液を分泌し精子が卵子に到達するのを手助けします。肥大の原因は不明ですが40歳代半ばより小さくなるグル―プと大きくなるグループに分かれ、その大きくなるグループが前立線肥大症です。
 
前立線が大きくなると膀胱と尿道が圧迫されます。その結果、頻尿・残尿感、自律神経が興奮し、精神的に不安定な状態になります。50歳以上の男性で表のような症状ある方は前立線肥大症が強く疑われます。父親・兄弟といった近親者が前立線肥大症の場合、肥大症になる危険度は高いといわれています。


■ 診断法は?
診断は、まずは検尿・問診・直腸診(肛門から指を挿入し前立線を触る)などです。治療方法は漢方薬やホルモン剤を含む薬、効果が出ないと内視鏡での手術があります。とはいえ、「予防に勝る治療無し」、定期健診をおすすめいたします。

少しでも不安があれば、まずは相談から泌尿器科の扉をノックしてください。あなたに合った無理のない治療方法を一緒にみつけましょう。前立線ガンの有無も確認できますよ。

男性特有 前立腺がんが増加!

■ 前立腺がんの現状
近年の食生活の欧米化に伴い日本でも増加傾向の著しい男性特有のがんの一つです。前立腺肥大症に比べて前立腺がんは初期には自覚症状が出ず発見が困難です。

■ 診断法は?
前立腺がんの診断はまず直腸診・血液検査(PSA)・経直腸的前立腺エコーの三つで行います。
直腸診とは、肛門から指を入れ前立腺を触り、大きさ・硬さ・表面の状態を確認する診察です。あまり受けたくない診察ですが、すぐにがんの有無が分かります。どうしても嫌な方は血液検査だけでも受けて下さい。

■治療法は?
これらの検査で前立腺がんが疑われると前立腺の針生検を行います。入院が必要で、肛門からエコーの機械を挿入し前立腺を確認しながら正確に6~12ヶ所を針で刺し組織を採取します。がんが確定したら進行具合を調べ治療方法を決定します。
 前立腺がんは2番目に多いがんですが、死亡率は6番目です。手術方法も進んでいますし、放射線治療・ホルモン療法も効果があります。

男性のみなさん、前立腺がんの早期発見・早期治療を!

~前立腺がんと向き合う~ 治療編1「ホルモン療法」

■ホルモンが影響?
前立腺がんの治療法のなかでも一番選択されることの多い「ホルモン療法」についてお話します。前立腺がんの多くは精巣・副腎から出る男性ホルモンの影響を受けて増殖します。簡単に言いますと「ホルモン療法」はその男性ホルモンの分泌・働きを抑えることにより前立腺がんを抑制する治療法です。

■「ホルモン療法」とは?
「ホルモン療法」には『卵巣摘除術』と『薬物療法』があります。薬剤は注射薬の『LH│RHアゴニスト』と内服薬の『抗男性ホルモン』『女性ホルモン』がありいずれも非常に効果があり90%以上の人に効きますが、男性機能障害(勃起障害、性欲減退)またはほてり、発汗といった女性の更年期障害のような症状、さらに骨粗鬆症の副作用が出る場合があります。しかし、重篤な副作用はなく治療は通院で可能なため患者さんの負担は軽い治療法といえます。

■「ホルモン療法」の利点・欠点
しかしながら、がんを死滅させることはできません。数カ月から10年くらいで効果が無くなり、その際は治療が難渋します。そのため若年(75歳以下)が選択されることは少ないですが、効果が無くなるまでの期間を遅らせるために「間欠的ホルモン療法」といった方法もあります。この方法は副作用を軽減でき、治療費を抑えられます。

年齢や身体の状態、がんの進行具合などで条件は違ってきます。治療法の利点・欠点を考慮し一番合った方法を泌尿器科医と相談の上選択しましょう。

~前立腺がんと向き合う~ 治療編2「手術療法」

■「手術療法とは?」
がんを根治する可能性が一番高い治療法は、手術療法とされています。しかしながら、その対象となるのは原発巣(最初にがんが発生した臓器)に留まって他の臓器に転移していない状態の患者さんとなります。1994年に腫瘍マーカー(血液検査)のPSA(前立腺特異抗体)の開発により手術可能な早期前立腺がんが圧倒的に増えました。天皇陛下や間寛平さんもこの検査で発見されています。

■術中の問題点・術後の合併症
前立腺は周囲を骨に囲まれた骨盤という壷の底にあり、両手が何とか入るだけの狭いスペースに存在しています。周囲は血管が網目状に走り出血しやすく、その摘出手術はかなり難易度が高くなります。また、前立腺のすぐ近くには勃起神経や尿道括約筋があるため術中に損傷すると勃起障害や尿漏れなど、術後の合併症をきたすことがあります。
手術の医療費について

手術方法は一番一般的なのは開腹手術です。お腹に数カ所穴をあけるだけの「腹腔鏡下前立腺摘出術」が2006年4月1日より保険適用となり、診療報酬4万5300点=3割負担で約14万円、開腹手術は約1万3000点=3割負担で3万9千円です。
50歳以上の男性の皆様へ

前立腺がんは早期に発見するほど治療の選択肢は多いです。適齢期(50歳以上)の方は一度診察を受けておくことをおすすめ致します。色々な治療法の中からそれぞれのライフワークに合った納得のいく治療法を一緒に見つけ、明るい未来を手に入れましょう。

~前立腺がんと向き合う~  治療法3 「放射線治療」

前立腺がんの治療、最終回は放射線治療です。

■「放射線治療」とは?
放射線治療とは、放射線を使ってがん細胞の遺伝子を破壊し細胞分裂ができなくする方法です。
放射線治療には手術と同様根治を目的とする場合と、骨転移による痛みの緩和・病的骨折の予防を目的とする場合の2種類があります。

主な2種類の治療法
①外照射法
②密封小線源療法(組織内照射法)

の2つになります。①は身体の外から前立腺に放射線を照射する方法で②は小さな粒状の容器に放射線を放射する物質(アイソトープ)を密封し前立腺に埋め込み内側から治療する方法です。②の方が少ない放射線量で同等の効果があり副作用も少ないですが、がんをより早期に発見する必要があります。

■放射線治療の最大の欠点とは?
放射線はがんを死滅させる効果があり、その効果は放射線量に比例します。同時に正常な組織にも甚大な障害を与えます。その為、皮膚・直腸・膀胱などに悪影響が出、放射線皮膚炎や潰瘍、排尿・排便の回数の増加、痛み、出血などが起こります。
進化する最先端の治療法
 正常な組織に悪影響の無い治療法として重粒子(炭酸イオン)・陽子線治療があります。この治療は最先端医療で現在医療保険の適応がなく自費となり数百万円必要で、この治療が行える施設は全国的にまだ少ないことが今後の課題です。

■泌尿器科専門医として
前立腺がんになってしまったことは残念なことです。しかし悲しみの向こうにはご家族や専門医が一丸となりあなたをサポートします。あなたの明るい未来のためにご協力できれば幸いと考えております。

~子どもの健康と将来を考える~ 「小児の包茎」

子どもを持つ母親の一番の心配事は、自分の子が正常に成長しているか?という一点です。

特に男の子のペニスに関しては知識も少なく、不安に感じている母親も多い事と思われます。男の子のペニスは出生時には包皮に覆われており、通常は成長にともない自然と亀頭が露出し、包皮の翻転が可能となってきます。だから赤ちゃんの時に剥けていなくても心配は要りません。

■こんな症状に注意
しかしながら、おしっこの時に包皮が風船のように膨らみ出にくい場合や、亀頭包皮炎といってペニスが赤く腫れて痛い状態を繰り返す子供は改善する必要があります。亀頭部を清潔に保っていないと細菌が侵入し、炎症します。炎症を頻回に繰り返すと包皮と亀頭が癒着(くっ付いてしまう)し、ますます包皮が剥けない状態になってしまいます。

■包茎の正しい対処法
赤ん坊の時から入浴時の皮膚が柔らかい時に徐々に翻転を試みることが大切です。焦らず包皮の翻転を試みていれば、数ヶ月で亀頭部を完全に露出できます。

ただし、包皮が十分に伸びていない状況で無理やりに剥くと、嵌頓包茎(かんとんほうけい)を引き起こします。嵌頓包茎とは包皮が狭いために陰茎を絞めつけ循環障害を起こしている状態のこと。放置すると包皮が水脹れし、最悪緊急の手術が必要になります。

■子どもの未来のために
成人になっての包茎は精神的にコンプレックスの原因となるだけではなく、陰茎がんのリスクも高めます。可能ならば赤ん坊の段階で包皮を翻転し、格好いいペニスを作ってあげてください。翻転が困難な場合は、ステロイド軟膏を使用する事も一手と考えます。

一度、泌尿器科医にご相談下さい。お子さまの健康と明るい未来に向けて、全力でサポートいたします。

マイタウン奈良掲載コラム